退職した会社の口コミは書いていい?法的リスクと注意点を整理
退職した会社について口コミサイトに投稿することは違法なのか。名誉毀損や秘密保持義務、発信者情報開示請求といった論点を、判断の材料として整理しました。
入社してから「こんなはずではなかった」と感じた経験は、どのくらいの人が持っているのでしょうか。
企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する合同会社鳳エンジニアリングは、2026年8月、全国の20〜59歳で勤務先を退職した経験がある男女500人を対象に、職場情報に関する意識調査を実施しました。この記事では、その結果から見えたことを整理します。
直近で退職した会社について、入社前にその実態(職場環境や働き方)を知っていたら入社しなかったと思うかを尋ねました。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| そう思う | 22.6% |
| ややそう思う | 26.2% |
| あまりそう思わない | 31.6% |
| そう思わない | 19.6% |
「そう思う」「ややそう思う」を合わせて48.8%。退職経験者のおよそ半数が、入社前の情報が十分であれば異なる判断をしていた可能性があると回答しています。
裏を返せば、残る約半数は入社の判断自体には後悔していません。すべての退職が情報不足に起因するわけではない、という点も同時に読み取れます。
転職先を検討する際に重視する情報を6つの観点で尋ね、あわせて「入社前に最も知りたい情報」を1つだけ選んでもらいました。
結果には、はっきりとしたずれが現れました。
| 項目 | 重視する | 最も知りたい |
|---|---|---|
| 給与・待遇 | 85.0% | 32.6% |
| ワークライフバランス(残業・休日) | 82.6% | 29.2% |
| 風通し・コミュニケーション | 74.8% | 21.8% |
| 法令遵守・ハラスメントへの対応 | 70.8% | 3.6% |
| やりがい・裁量感 | 64.2% | 10.6% |
| 成長・キャリア機会 | 47.0% | 2.2% |
※「重視する」は「非常に重視する」「やや重視する」の合計
最も差が大きかったのが、法令遵守・ハラスメントへの対応です。7割を超える人が重視すると答えている一方で、「最も知りたい情報」として選んだ人は3.6%にとどまりました。
この結果は、いくつかの読み方ができます。
ひとつは、問題がないことが前提とされているという見方です。給与や労働時間は企業ごとに差があることが分かっているため比較の対象になりますが、ハラスメントへの対応は「あって当たり前」と考えられており、わざわざ確認するものとは捉えられていない可能性があります。
もうひとつは、知りたくても知る手段がないという見方です。求人票にも面接にも現れにくい情報であるため、そもそも「知りたい項目」として意識されにくい、という構造です。
いずれにせよ、重視されていないわけではありません。7割が重視すると答えている以上、情報が手に入るなら参照される項目だと考えられます。
企業口コミサイトへの投稿を検討したことがあるかを尋ねたところ、全体では24.2%でした。年代別に見ると、明確な傾向が現れています。
| 年代 | 投稿を検討した割合 |
|---|---|
| 20代 | 46.2% |
| 30代 | 40.7% |
| 40代 | 33.3% |
| 50代 | 15.0% |
若い年代ほど投稿を検討した経験が多いという結果でした。
自由回答には「当時は口コミサイトがなかった」「口コミを書こうという発想がなかった」といった記述もあり、退職した時期の違いが影響している可能性があります。50代の回答者にとって、直近の退職が口コミサイトの普及前である場合も含まれると考えられます。
投稿を検討した121人のうち、書きたい内容をそのまま投稿できた人は20人にとどまりました。
| 回答 | 人数 |
|---|---|
| 検討し、書きたい内容をそのまま投稿した | 20 |
| 検討し投稿したが、書きたい内容よりも控えめにした | 47 |
| 検討したが、結局投稿しなかった | 54 |
検討した人の**83.5%**が、内容を控えめにするか投稿そのものを断念していたことになります。
理由を尋ねたところ(複数回答)、「投稿者が自分だと特定されそうだと思ったから」「会社から法的措置を取られることが不安だったから」「元の上司や同僚との関係が悪化しそうだったから」「転職先や業界内での評判に影響しそうだと思ったから」のいずれかを挙げた人が**78.2%**にのぼりました。
一方、「書くのが面倒だったから」のみを挙げた人は17.8%でした。
投稿が進まない要因は、手間ではなく、特定されることによる不利益への懸念にあると考えられます。
調査結果を並べると、ひとつの構図が見えてきます。
情報を求める人がいて、情報を持つ人もいる。にもかかわらず、その間で情報が流通していない。この構造が、労働市場の情報格差を生んでいるとも考えられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | 職場情報と企業口コミに関する意識調査 |
| 調査主体 | 合同会社鳳エンジニアリング |
| 調査方法 | インターネット調査(セルフ型アンケートツール「Freeasy」を使用) |
| 調査対象 | 全国20〜59歳の男女のうち、勤務先を退職した経験がある方 |
| 有効回答数 | 500名 |
| 調査期間 | 2026年8月10日〜8月13日 |
本調査はインターネット調査パネルを用いた自主調査であり、回答者の属性には偏りがあります。とくに退職経験の有無を条件としたことから、回答者の56.0%を50代が占めています。全体の数値を日本の就業経験者全体の傾向として一般化することはできません。
また、投稿を控えた理由に関する設問は、該当する101名を対象としたものであり、回答者数が限られます。個別項目間の差は誤差の範囲に含まれる可能性があります。
割合は小数第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。