在職中に会社の口コミを書くとどうなる?退職後との違いを整理
在職中の口コミ投稿は、退職後と比べてどのようなリスクがあるのか。就業規則・懲戒・人間関係の観点から、判断の材料を整理しました。
退職した会社について、口コミサイトに書き込もうとして手が止まった経験はありませんか。
「本当のことを書くだけなのに、訴えられたりしないだろうか」 「自分が書いたと会社にバレるのではないか」
こうした不安から投稿を諦める人は、決して少なくありません。企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する当社が退職経験者500人を対象に実施した調査では、口コミの投稿を検討した121人のうち、書きたい内容をそのまま投稿できた人は20人にとどまりました。残る83.5%は、内容を控えめにするか、投稿そのものを断念しています。
この記事では、退職した会社の口コミを投稿する際に関わってくる法的な論点を整理します。判断の材料としてお読みください。
なお、本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
まず前提として、退職した会社について感想や評価を述べること自体が、法律で禁じられているわけではありません。
働いた経験にもとづく率直な情報は、これから就職や転職を考える人にとって価値のあるものです。企業口コミサイトが社会的に一定の役割を果たしているのは、そうした情報の需要があるからです。
問題になるのは、書き方や内容が一定の線を越えた場合です。以下、主な論点を順に見ていきます。
最も意識されやすいのが名誉毀損です。
名誉毀損は、不特定多数が知りうる状態で、具体的な事実を示して他人の社会的評価を低下させた場合に成立しうるものです。注意が必要なのは、書いた内容が真実であっても成立しうるという点です。「本当のことだから問題ない」という理解は正確ではありません。
ただし、次の3つの条件がそろう場合には、責任を問われない余地があるとされています。
労働環境や法令違反に関する情報は、公共性が認められる方向に働きやすいと考えられます。一方で、特定の個人への私怨をぶつける内容は、公益目的とは評価されにくいでしょう。
また、具体的な事実を示さずに「無能な会社」といった評価のみを述べる場合は、名誉毀損ではなく侮辱の問題として扱われることがあります。
法的な当てはめは個別性が高く、素人が確実に判断できるものではありません。そのうえで、リスクを下げる方向に働きやすいのは次のような書き方です。
見落とされがちですが、こちらも重要です。
多くの企業では、就業規則や入社時の誓約書で秘密保持義務を定めています。そしてこの義務は、退職後も一定期間または無期限に存続すると定められていることが少なくありません。
口コミに書く内容が、顧客情報、未公開の技術情報、取引先との契約条件といった営業秘密にあたる場合、名誉毀損とは別の問題として責任を問われる可能性があります。
退職時に署名した書類の内容を覚えていない場合は、手元に控えがあれば確認しておくとよいでしょう。
一方で、労働時間や休日の実態、職場の雰囲気といった、自分自身の労働条件に関する事柄は、一般に営業秘密とは性質が異なります。
「自分が書いたと知られてしまうのではないか」という不安は、現実的な懸念です。
特定される経路は、大きく2つあります。
権利を侵害されたと主張する側は、法律に定められた手続きにより、投稿者の情報開示を求めることができます。サイト運営者やプロバイダに対して開示を請求し、裁判所の判断を経て発信者が特定されるという流れです。
ただし、これは投稿の内容が権利侵害にあたると判断される場合の話です。開示には手続き上の負担も伴うため、すべての批判的な投稿に対して行われるわけではありません。
実務上、こちらの方が身近かもしれません。
投稿内容に含まれる情報の組み合わせから、「これを書けるのは誰か」が推測されてしまうケースです。
小規模な組織ほど、この方法で特定されやすくなります。法的な手続きを経ずに、社内で「あれは誰だ」と話題になる形です。
当社の調査でも、投稿を控えた理由として「投稿者が自分だと特定されそうだと思ったから」を挙げた人が最も多く、特定・法的措置・人間関係・評判のいずれかへの懸念を挙げた人は78.2%にのぼりました。
在職中の投稿は、退職後と比べて考慮すべき点が増えます。
就業規則に信用毀損行為の禁止が定められている場合、懲戒の対象とされる可能性があります。また、日常的に顔を合わせる相手がいる状況では、特定された場合の影響がより直接的です。
退職後であれば、雇用関係にもとづく制約は減りますが、前述のとおり秘密保持義務は残る場合があります。
ここまでの内容をまとめると、次のような点が確認のポイントになります。
すべてを自分でチェックするのは簡単ではありません。とくに「特定されうる記述かどうか」は、書いている本人には気づきにくい部分です。
職場で経験したことを言葉にできないまま抱え続けることは、本人にとっても、これから同じ環境に入ろうとする人にとっても、望ましい状態とは言えません。
一方で、リスクを理解せずに書くことも勧められません。必要なのは、書かないことでも、無防備に書くことでもなく、リスクを把握したうえで書き方を選べる状態です。
冒頭で紹介した調査で、投稿を断念した理由の上位が「面倒だから」ではなく特定や不利益への懸念だったことは、この問題が労力ではなく安心の欠如にあることを示しています。
本記事に記載した調査データは、企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する合同会社鳳エンジニアリングが2026年8月に実施した「職場情報と企業口コミに関する意識調査」(全国20〜59歳の退職経験者500名、インターネット調査、有効回答500名、調査期間2026年8月10日〜13日)にもとづきます。回答者の56.0%を50代が占めており、全体の数値を就業経験者全体の傾向として一般化することはできません。
本記事は一般的な情報の整理を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の事案の判断については、弁護士等の専門家にご相談ください。
書きたい内容を入力するだけで、個人特定や名誉毀損のおそれがある箇所をAIがその場で指摘します。登録不要・入力内容は保存されません。
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