TrustScope
投稿前に知っておきたいこと

職場の口コミで特定されない書き方は?投稿前に見直したい6つの観点

口コミ投稿をためらう理由として最も多く挙げられるのが、「自分が書いたと特定されそう」という懸念です。

企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する当社が退職経験者500人を対象に実施した調査では、投稿を控えた、または内容を控えめにした理由として「投稿者が自分だと特定されそうだと思ったから」が最も多く挙げられました。さらに、特定・法的措置・人間関係の悪化・評判への影響のいずれかを懸念した人は78.2%にのぼります。

一方、「書くのが面倒だったから」のみを理由に挙げた人は17.8%にとどまりました。投稿が進まない原因は、労力ではなく安心の欠如にあると考えられます。

この記事では、特定につながりやすい記述の型と、内容の価値を損なわずに書き換える考え方を整理します。

特定は「法的手続き」だけで起きるわけではない

投稿者の特定というと、発信者情報開示請求のような法的手続きを思い浮かべるかもしれません。これについてはこちらの記事で扱っていますが、実務上はもうひとつの経路の方が身近です。

投稿内容そのものから、「これを書けるのは誰か」が推測されてしまうケースです。

法的な手続きを経ることなく、社内で話題になり、心当たりのある人物が絞り込まれていく。とくに小規模な組織や、部署単位で完結する業務が多い環境では、この方法での特定が起こりやすくなります。

以下、推測の手がかりになりやすい記述を6つの観点で見ていきます。

観点1:時期と在籍期間

「2024年の春に入社して、1年半で辞めました」

こうした記述は、人事データと突き合わせれば対象がごく少数に絞られます。とくに中途採用の場合、同時期の入退社者は限られます。

書き換えの方向性:時期を幅で表現する。「数年前」「在籍は2年未満」といった粒度に留める。年号や月の特定は、記事の趣旨に必要でない限り避ける。

観点2:部署・職種・役割

「経理部で唯一の女性社員でした」 「開発チームのリーダーを務めていました」

組織内で一人しかいないポジションを明かすことは、実名を書くのとほとんど変わりません。

書き換えの方向性:職種は大きな括りで書く。「管理部門」「技術職」といった粒度なら、多くの場合で問題は生じにくくなります。

観点3:固有の出来事への言及

「入社3か月目に担当した◯◯という案件で」 「あの年の年末の緊急対応のとき」

その出来事を経験した人が限られている場合、言及した時点で範囲が絞られます。社内の人間であれば「あのときの話だ」とすぐに分かります。

書き換えの方向性:個別の案件名や具体的な出来事ではなく、パターンとして記述する。「納期直前の仕様変更が常態化していた」といった書き方であれば、実態は伝わりつつ、特定の出来事に紐づきません。

観点4:上司・同僚の描写

「50代の男性部長が」 「中途入社の先輩が」

相手を特定できる記述は、書かれた側の名誉に関わる問題を生むと同時に、書き手自身の特定にもつながります。「この人物についてこう書くのは誰か」という形で推測が働くためです。

書き換えの方向性:個人ではなく、組織の構造や運用の問題として書く。「特定の管理職の判断に依存する体制だった」といった記述であれば、個人を標的にせずに実態を伝えられます。

観点5:数値の具体性

「残業は月に平均87時間でした」

正確な数値は説得力を持ちますが、その数値を把握している立場の人は限られます。とくに自分の労働時間を詳細に記録していた場合、それ自体が手がかりになることがあります。

書き換えの方向性:範囲で示す。「月80時間を超える月が続いた」であれば、実態の深刻さは伝わります。

観点6:文体と語彙

見落とされやすい観点です。

独特の言い回し、特徴的な漢字の使い方、句読点の打ち方、専門用語の選び方。日常的にやり取りしていた相手には、文章の癖から書き手が推測されることがあります。

書き換えの方向性:普段のメールやチャットとは異なるトーンで書く。箇条書きを多用する人であれば文章で書く、といった意識的な変更が有効な場合があります。

内容を薄めることとは違う

ここまでの書き換えは、いずれも情報の価値を保ちながら、特定の手がかりを減らすことを目的としています。

当社の調査では、投稿を検討した121人のうち、書きたい内容をそのまま投稿できた人は20人にとどまり、83.5%が内容を控えめにするか投稿を断念していました。この「控えめにする」が、単に書きたいことを削る方向に働いてしまうと、情報としての価値が失われます。

目指したいのは、削ることではなく書き方を変えることです。

特定されやすい書き方 実態を保った書き換え
2025年4月に入社し、10月に退職 半年ほどで退職した
経理部で唯一の担当者だった 管理部門に在籍していた
◯◯案件での深夜対応が続いた 納期前の深夜対応が常態化していた
月87時間の残業だった 月80時間を超える残業が続いた
50代の男性部長の指示で 管理職の判断で

右側の記述でも、職場の実態は十分に伝わります。

投稿前のチェックリスト

  • 在籍期間や入退社時期が、年単位より細かく書かれていないか
  • 組織内で一人しかいない立場が明かされていないか
  • 特定の案件や出来事への言及があるか
  • 個人を指し示す描写が含まれていないか
  • 限られた人しか知りえない数値が書かれていないか
  • 普段の文章の癖がそのまま出ていないか

すべてを自分で点検するのは簡単ではありません。とくに文体や、自分にとって当たり前になっている情報の希少性は、書いている本人には気づきにくい部分です。

書かないことが最善とは限らない

特定のリスクを完全にゼロにする方法はありません。しかし、リスクを理由に投稿そのものを諦めてしまうと、経験は誰にも共有されないまま終わります。

必要なのは、何が手がかりになるのかを理解したうえで、自分で書き方を選べる状態です。


この記事について

本記事に記載した調査データは、企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する合同会社鳳エンジニアリングが2026年8月に実施した「職場情報と企業口コミに関する意識調査」(全国20〜59歳の退職経験者500名、インターネット調査、有効回答500名、調査期間2026年8月10日〜13日)にもとづきます。回答者の56.0%を50代が占めており、全体の数値を就業経験者全体の傾向として一般化することはできません。

本記事は一般的な情報の整理を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の事案の判断については、弁護士等の専門家にご相談ください。

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