在職中に会社の口コミを書くとどうなる?退職後との違いを整理
在職中の口コミ投稿は、退職後と比べてどのようなリスクがあるのか。就業規則・懲戒・人間関係の観点から、判断の材料を整理しました。
企業口コミサイトへの投稿をためらう理由として、「会社から法的措置を取られるのではないか」という不安が挙げられることがあります。企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する当社が退職経験者500人を対象に実施した調査でも、投稿を控えた理由として「会社から法的措置を取られることが不安だったから」を挙げた人が31.7%にのぼりました。
この不安の中心にあるのが、発信者情報開示請求という制度です。名前は聞いたことがあっても、実際にどのような手続きなのかを知る機会は多くありません。
この記事では、制度の仕組みと実際の流れを整理します。漠然とした不安を、具体的な理解に置き換えるための材料としてお読みください。
なお、本記事は一般的な情報の整理であり、法的助言ではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。
インターネット上の投稿によって権利を侵害されたと主張する人が、その投稿をした人物の情報(氏名、住所、メールアドレスなど)の開示を求める手続きです。
匿名で投稿されたものであっても、一定の条件のもとで投稿者にたどり着ける仕組みが法律で定められています。
重要なのは、この制度が「権利侵害があった場合」を前提としている点です。単に会社にとって都合の悪い内容であるというだけで、当然に開示が認められるわけではありません。
手続きは通常、複数の段階を経ます。
まず、口コミサイトの運営者に対して、投稿に関する情報の開示を求めます。ここで得られるのは、投稿時のIPアドレスやタイムスタンプといった情報です。この時点では、まだ投稿者個人は特定されません。
得られたIPアドレスから、投稿者が利用していた通信事業者(プロバイダ)を割り出し、そのプロバイダに対して氏名や住所の開示を求めます。ここで初めて、個人の特定に至ります。
投稿者が特定された後、あらためて損害賠償請求や削除請求といった手続きに進むことになります。
つまり、開示請求はそれ自体が目的ではなく、その先の請求のための前段階という位置づけです。
投稿者の立場からは見えにくいことですが、この手続きは請求する側にも相応の負担があります。
そのため、批判的な投稿があったからといって、企業がただちに開示請求に踏み切るとは限りません。実際には、まずサイト運営者に削除を求めるという対応が取られることも多くあります。
ただし、これは「開示請求されない」という意味ではありません。投稿の内容が明らかに権利を侵害していると判断される場合や、企業が毅然とした対応方針を取っている場合には、現実に手続きが進むことがあります。
開示が認められるかどうかは、権利侵害の明白性が中心的な判断材料になります。一般的に、次のような投稿はリスクが高い方向に働きます。
逆に、自分が直接経験した労働条件の実態を、感情的な断定を避けて記述している場合は、権利侵害が明白とは言いにくくなります。
このあたりの考え方は、名誉毀損の成立要件と重なる部分が多くあります。詳しくは退職した会社の口コミは書いていい?法的リスクと注意点を整理もあわせてご覧ください。
この制度は、ネット上の誹謗中傷に苦しむ被害者を救済するために設けられたものです。名誉を傷つけられた人が泣き寝入りせずに済むようにする、という趣旨自体には十分な理由があります。
一方で、制度の存在が、正当な情報発信までを萎縮させている面があることも否定できません。当社の調査で、投稿を検討した人の83.5%が書きたい内容をそのまま投稿できていなかったことは、その一端を示しているとも考えられます。
投稿する側に必要なのは、制度を過度に恐れることでも、軽視することでもありません。どのような投稿がリスクを高めるのかを理解したうえで、書き方を選ぶことです。
名誉毀損は、摘示した事実が真実であっても成立しうるものです。真実性は免責の要件のひとつですが、それだけで当然に責任を免れるわけではありません。
制度上の開示請求とは別に、投稿内容に含まれる情報の組み合わせから、社内で推測されてしまうケースがあります。むしろこちらの方が身近なリスクかもしれません。
投稿を削除しても、それ以前に保存された記録から手続きが進む可能性はあります。削除が免責を意味するわけではありません。
漠然とした不安のまま投稿を諦めるのではなく、何がリスクを高めるのかを把握したうえで判断することが重要です。
本記事に記載した調査データは、企業口コミプラットフォーム「TrustScope」を運営する合同会社鳳エンジニアリングが2026年8月に実施した「職場情報と企業口コミに関する意識調査」(全国20〜59歳の退職経験者500名、インターネット調査、有効回答500名、調査期間2026年8月10日〜13日)にもとづきます。回答者の56.0%を50代が占めており、全体の数値を就業経験者全体の傾向として一般化することはできません。
本記事は一般的な情報の整理を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の事案の判断については、弁護士等の専門家にご相談ください。
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